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2022/08/28

山暮らしその13

おおそらく最後の休暇ナウ。

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山荘から一番近い村までバスで降りて、枝豆ともろきゅうで飲む。しばしぼんやり。

やっぱり、こーいったものを思いついたときにパッと食べられる環境っていいなぁ。

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隣の山岳博物館も見学。こーいった箱物って、どうしても行く末を案じてしまうものが多い。

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昨日は20数名の団体予約が入っていた。バイトも社員さんも朝から仕込みでバタバタ。なのに、全く姿を見せないので、大量遭難か?と思ったら、旅行会社がキャンセル連絡を忘れていたという顛末。

違約金はあっちが持つのは当然ながら、余ったポークステーキを全員で「必死で」食った。一人三枚のノルマに苦しむ羽目に。

 

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うまい物も、数をこなすと辛い。

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デザートの葡萄も、腹に詰め込む。もう味わう余裕なし。

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先日、TD沖縄以来、久しぶりの自転車アニキが山荘に泊まりにきて下さった。あいにく曇天続きだったが、楽しんで下さったようで何より。

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バイトの一人がまた山を降りていった。出会った数と別れる数は同じという法則。どうかお元気で。

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少し前の休暇で甲府に降りた時のこと。盆地特有の暑さで朦朧としながら、目的なんか何も無い、ただ闇雲に人気の無い道を歩いていたら、銭湯見つけた。

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客は自分だけ。許可もらって撮影。

掛け流しの温泉に沈んでみた。これまで山であった出来事や、去っていった仲間のことを思い出してみたり。

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風呂上がりに、前歯が3本しか残ってない主人と立ち話。自分の居る小屋のことも良く知っておられ、過去はかなりの岳人だったことが判明。周りの小屋番のバイトたちも良く立ち寄る銭湯らしい。

色々話して背中を押してもらった感じ。

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また、山に戻る。

もうすぐ夢が覚めて、あの日々は現実だったんだろうか、あの空に浮かぶ雲は同じとこからやって来てるんか?とか

思う日が、じわじわ迫って来てる。

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2022/08/23

山暮らしその12

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随分日の出が遅くなってきた。山の夏は短いことを実感。「この日」はいつもより早起きして、北岳のモルゲンロートをぼんやり眺めてみた。朝の空気はいつもより冷たく感じる。

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「この日」を最後に山を降りるバイト仲間を見送る。日に2便しかない林道バスに乗っていくつかの鉄道や飛行機を乗り継ぎ、熊本に帰るそうだ。

Mさん54歳。奥さんと共に、数ヶ月バイトしてそのお金で数ヶ月旅に出て、お金がなくなるとまた数ヶ月バイトして旅に出てを繰り返しているといっていた。不安を考え出すとキリがないので、目の前にある楽しそうなことをやって生きていくって考え方。自分の歳になっても衝撃を与えてくれる人との出会いができたので、ここにきたことは間違いじゃなかったな。

同時に、別れの辛さもひとしお。

40日あまり、一緒に暮らして一緒に働いて一緒に悩み苦しみ笑っていたのに。Mさんの記憶にも自分が残れるといいんだけどな。

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バスが走り去った後はぼーっとしてしばらく動けやんでいたら、こいつが飛んできた。

励ましてくれるのか?

「家に帰ろかな」。

山が好きで山の中で暮らすとどんなに幸せな気持ちになれるのか、山の景色は自分に何を与えてくれるのか、そんな巨大な期待が毎日ちょっとづつ

しぼんでいくのが分かったり、目を逸らしてみたり。

結論として、憧れを日常にしたらあかんってこと。山は非日常だから憧れもするし行けば楽しいし帰りたくないなと思うし。けど、今は大阪の家が憧れになってしまった。

変なの。。。

11月の小屋閉めまでいるつもりだったけど、そろそろ自分も山を降りようと思います。

山暮らしの日々を書くのも、あと少しかな。

 

 

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2022/08/18

山暮らしその11

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自分で調理したり社員さんが作ってくださったりしてる「賄い」。野菜は一応食べているけど、基本は「腹一杯にする」ことなので、必然的に炭水化物が中心で、魚は加工したものばかり。たまに甲府に降りても忙しくて魚を食べる時間がなく、かれこれ40日以上「生の魚」を食べていない。

日帰りで意を決して「寿司屋」へ行き、ランチメニューに載っていた最高峰を注文。

体に染み込んでいくのがわかる。次に口にできるのはいつになるやら。

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早立ちの登山者向けに朝ごはんを作る風景。こっちも寝起きで朦朧とした意識で作るので、たまにかまぼこが足りなくなったり。

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朝ご飯の賄いにもみんな胃腸が疲れてきたので、にゅうめんの卵とじ作ってみた。染み込む。

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カミキリ虫の来訪。

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小屋に対する想いが違ったり、社員とバイトの立場がうまく噛み合わなかったり、指示のされ方が気にいらなかったり、下から上を見てもどかしかったり、狭い共同生活の中で不満がどんどん膨らんでいって、とうとうお互い口も聞かなくなってしまった。

ギクシャクを絵に描いたような日々が続いた。もう山を降りて帰ろうかなと何度も考えた。

多様性を認めるなんてそんなに簡単なもんじゃない。ましてや同じ屋根の下で40日以上一緒に暮らせば本当に色々ある。

昨日、ようやくその硬い雪が溶けた。

久しぶりにうまい酒を飲んだ。高級なシャインマスカットを食べた。みんな想いは同じ方向を向いた。

この山小屋っていう小さな「宇宙船」は再び正しい軌道を描き始めた。

こんな歳になっても、忘れられない思い出の夏になるなんてな。

挑戦してよかったよ。

 

 

 

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2022/08/14

山暮らしその10

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40日以上経つのに、初めて「月夜」を見た。

それくらい、天気の良い日が少ない感じ。毎朝晴天、昼からどんどんガスが湧いて、午後から夕方まできっちり土砂降り。

写真のように月が出ると、空一面が明る過ぎて「満天の星」が見えた試しがない。ちょっと意外。

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天気が安定しないので、たまに晴れると荷上げと荷下げが一斉に行われる。近隣の小屋が一斉にやるもんだからヘリコプターも40往復とかそんな感じで。

写真は、上の小屋から「トイレ」を下ろす風景。落としたら「大惨事」。先日北岳に登った時にトイレを借りようと入ったら、便器の中は見事な「マウンテン」が。

傍に木の棒が置いてあり「大をするときは、この棒でブツを押し込んでからご利用ください」と一筆が。

流石に、何事もなかったように出てきてしまったが、、、。

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ある日の賄い。大抵は、オーダーミスのランチの残りだとか、期限切れの冷食だとかを賄いに食べる。炭水化物主体は仕方のないこと。

最近、毎日のように「下山が遅れて最終の林道バスに乗れない、なんとかゲートまで車で送ってほしい」とか「どうしても明日会社に出なきゃならんので、なんとかしてくれ」だとか「飛び込みで泊まらせて」とかいう人があとをたたない。

計画の甘さと余裕の無さはダメだと思う。

普段から、どの程度の荷物を背負って何時間くらいなら歩けるかとか、職場への根回しだとか、予備日を持っておくとか、

登山はやっパリ旅行とはちょっと毛色が違うので、緩いくらいの経過たてが方が楽しめると思うけどなぁ。

とはいえ過去の自分もどうしても翌日仕事に行かねばどえらいことになると、ハラハラしながら下山してもんやが、今思えば「どうにかなる」もんで。ましてや自分が下山しなきゃ10億の商談がパー、、、なんて人はそもそもちゃんと登山計画立ててきてると思う。

来週はバイト仲間が二人、ここを去る。

すでに朝晩は秋風が吹き始めているので、ことさら寂しくなるかなぁ。

11月の小屋閉めまでいてほしいなんて言われてるけど、日常に戻りたい気持ちも少し湧きあがってるのも確か。

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2022/08/05

山暮らしその9

滅多にない「休暇の連休」で甲府に降りてきた。バイト仲間が甲府市内にあるAEONに行って下界の空気を吸ってこいと強く勧めるので。

しかし、一泊しないとAEONにも行けない状況に我ながら笑える。山との往復のバスの本数が少ないので、日帰りだと40分しかAEONの空気吸えないからな。

けれど結果としては「もういいかな」。

目の手術をして一年が経とうとしているのに、いまだに、色彩の情報が多いところを歩くと脳が混乱してしまうので、自然と下を向いて歩いてしまうのが癖になってしまった。別に悲しくとも憂鬱でもなんでもないのに、下を向いて歩いてしまう。

一面の青い空とか、緑一色の森の中とか、目も楽だし、真っ直ぐ向いて歩けるし、いいかな。

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駅前に戻り、銭湯探し。

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奥さんの実家が近所というよしみで、よく通っていたとか。へー。

確かに温泉でいい湯だった。内装もおそらく当時のままの古さ加減。けど、ぼんやり湯船に浸かっていたら、地元の銭湯がとても懐かしく思えてしまって困った。

そして、思い出いっぱいのビジネスホテルへ。

まさか三年後に再びこの地で全然別の用事で同じホテルに泊まるなんて、人生わからんもんやと。

朝の食堂では、ワイシャツや背広着た、以前の自分のような人たちが黙々と飯食ってた。みんな頑張れ。

じゃ、再び山に戻ります。明日からまた5連勤。

人間関係がややこしくなりつつあって、ちょっと心穏やかではなくなってきてるけど、前職に比べたら屁でもない。

楽しくやろうな。

 

 

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2022/08/03

山暮らしその8

 

バイトしている広河原から、甲斐駒ヶ岳とか仙丈ヶ岳の登山口のある「北沢峠」までの南アルプス林道。数年前の台風の影響で通行止めになっており、先日の休暇に、なんとか徒歩で行けないかと挑戦したが、なすすべなく。

別の日には、道路がダメなら川を遡行してはどうだろうと行ってみたが、激しい水流に阻まれて、しかも川から道路までとても登れる高さじゃなかった。

で、昨日は仕事の休み時間にフラフラと再挑戦。

なんと、、、見つけてしまった「秘密の迂回路」。

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崩落現場の反対側に見事に出られた。それがこの写真。

ただし、ネットで拡散するとえらいことになるし、何より迷いやすいのでこの秘密の迂回路は現地で聞かれたらお答えす感じにします。

ここを通れば、北沢峠まで行けます。

付近の探検も小屋番の仕事なんで、またうろうろせねばと。

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お客さんに渓流釣りのプロの方がお見えになららて、手作りの毛針を見せてもらった。新宿に専門店があるよと教えてもらったけど、

「遠いがな。。。。」

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一昨日はまたまた遭難に発展しそうな事件が。

晩飯の最中に電話があり、林道のゲートが閉まるの何時だ?閉まったらもう街に降れないのか?と問い合わせがあり、「無理です」と答えたら

「金ならいくらでも出すから車でゲートまで送ってほしい」と漫画のセリフのようなことを言われてびっくりした。

うちに泊まって朝イチで降りてくださいと言って、待つこと「4時間」。

空身なら30分もかからない下山路を4時間経過しても姿を見せない。流石にまずいと思って、支配人と見に行くと、登山道にへたり込む姿が。

70歳を過ぎた小太りの方がテント泊の荷物を満載したザックを背負っていた。

計画性のなさ、若かった頃の体力の過信、問題点は山ほどあるが、もう誰も指摘はせずに。。。。

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さっき見つけたカメムシ。こいつも臭いのかな。

一ヶ月強すぎて、ちょっと疲れてきたかも。空気の薄い場所であんまり休憩時間にうろうろするのは良くないな。

それと、作業の内容によくわからないほどの高い精度を求められつつあったり、山小屋としての機能のブレが見えたり、なぜか?社員さんとバイトメンバーの橋渡し的な立場に置かれてしまったり、

サラリーマン時代に面倒臭いなぁと思っていたことがじわじわ再来してきてるので、

ちょっと息抜きしたいかな。

けど、山も森も昆虫もみんな優しいです。

 

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