蝶ケ岳
過去二度登った山。百名山でもないけど、頂上からの展望がエゲツなくて、自分の中では「槍・穂高の展望台」っぽい場所。いつもなら、岐阜県側からプラン建てるはずが、駐車場代、バス代、上高地の混雑とかいろいろ悩んで、松本側から登ることにした。結果的に、ヒトが少な目で静かな山歩きができたのでよかった。
登山口すぐの道標。こーゆーの見るとこの先どんな景色が待ってるのかドキドキする。
久しぶりにがっつり荷物を背負う小池さんの足取りが不安。自分は冬用テント一式と水4リットルほかいろいろで22キロ。ザックの肩ひもが食い込んで痛いけど、楽しみのほうが大きいから足取り軽め。
日差しは燦々と降り注ぎ、小鳥がピーパー鳴き、森に吹き抜ける風は五月の匂いを強烈に発し、もうなんちゅうか生きててよかったしか思いつかない時間。標高二千メートル超えたあたりから雪面になり、アイゼン付けてのそのそ登るが、失敗は
ピッケル持ってこなかったこと。
「こんだけ気温高いねんから絶対いらんわ」と判断したけど、やっぱりGW/残雪期なめたらアンカン!
仕方ないのでトレッキングポールで急場をしのいだが、けっこうヒヤヒヤ。
穏やかなテン場について酒飲んで昼寝という至福の時間。自分が山を好きになった理由は、歩く以外の時間は、ひたすら「飲む、食う、寝る」しかないこと。しかも目の前は”信じられない景色”のてんこ盛り。
この信じられない景色からとんでもないことに。
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昼寝から目が覚めてそろそろ晩飯食うかって頃(夕方5時)、風が少し強くなり始めたのでテントの中で鍋することにした。具材が少なくて粗末な鍋だが、ひさしぶりに山で食うのでめちゃくちゃ美味い。ただ、相変わらず風が強くてテントがバタバタするのだけが気になる。以前は風の影響が少な目な「はい松」の影に隠れるように張るけど、この時は天気予報が晴れ!っていうので景色のよい稜線に建ててみたが、
寝袋の中でウトウトし始めたころ、誰かが背中を押している。薄目を開けたが、小池さんやない。ん?と思ってメガネを引き寄せてよく見ると、
天井が目の前に。
外は聞いたことのないような何かの咆哮。そしてもんのすごい大量の砂粒を誰かがテントめがけて投げつけてる
いったい何が起こってるのか一瞬理解できないでいたが、ともかく風が凄いということだけはわかった。
ともかくテントが風で変形しかかっているので張り綱を点検しなくちゃと思って寝袋から這い出てアウターを着て外に出た瞬間目の前に広がったのは
数時間前まで真夏だった地面が、、、一面銀世界に。
おまけに直立できない!吹雪が凄くて目が開けられない!
暴風雪。
重いけどまぁいいかと思って背負ってきた冬用フライシートが幸いして、なんとか形を保っているけど、隣のテントなどほとんど型を保ってない!
風雪の中、手探りで大き目の石をかき集めてどんどんフライシートのスソに乗せていく!その間にも自分の体が暴風であちこち持っていかれそうになり、なんかもう
どうなってんねん!これ!!!???
テントの中に舞い戻って時計を見ると19時過ぎ。過去の経験だと、2,3時間もたてば低気圧が移動して静寂が来るはずなのでそれまでともかくテントが倒れないように小池さんと背中で2方向を支える作戦。そんなことをしていても一向に風が弱るどころから、会話も聞こえないほどになってきた。
時間はすでに0時になろうとしているとき、回りから悲鳴に近い人の声が。どうも倒壊している人が続出している模様。同時に、小屋のヒトが懸命に避難を説得しに回っている。もっと早めに避難すべきだったのか?とか、あと少し耐えれば風も雪も弱くなるかもとかまったく根拠のないままどんどん風雪が強くなり、はり綱が切れてテントが浮き上がりかけてきた。
ケータイ電話と財布だけを持ち、ついには避難を決意。ヘッデン突けても吹雪でほとんど手元が見ない中、小池さんはよろけながら必死でテントを抑え、自分はポールを抜いてテントをペシャンコにする作業。
しかし、抜けない!かじかんだ手は感覚を失い、もう泣きそうなる。ポールとテントの接合部を切ろうにも、ナイフはザックの中。
なんとかポールを抜いてテントをぺしゃんこに、回りの石を集めてその上に載せて重しにして、小屋に急ぐが
小池さんが来ない!
なんと!風で飛ばされてしゃがんだまま動けなくなっている。少しでも立ち上がると漫画みたいにくるくる回ってひっくりかえる始末。
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コメント
IMAX3Dで観た映画「エベレスト3D」の嵐の無理ゲーぶりもたいがいでしたが、リアルであの無理ゲーぶりを体感されるとは、、、
でやっぱり、リアルで無理ゲーでした??
投稿: Kiyoshi | 2016/05/03 11:12
●Kiyoshi アニキ、無理ゲ~でしたわ。カミさんが荷物と一緒に風に吹かれて転がっていく姿は、見ものでしたよ。
投稿: ロラおとこ | 2016/05/06 09:01